2012-04-12

ワインのアロマガイド

先月発売されました、ワインのアロマについての本のご紹介です。

http://www.harashobo.co.jp/new/shinkan.cgi?mode=1&isbn=04752-9
原書房/ワインを楽しむ58のアロマガイド
















何かの匂いを言葉で説明しようとする場合、2通りの方法しかないそうです。匂いの成分を表わす化学式や分子の名前で表現する、あるいはアナロジーで表現する、つまり「そうねえ、この匂いはスミレの花の香りに似ているわねえ…」 と、何か誰もが知っている(と思われる)別の匂いを引き合いに出して説明する、この2つです。

この本の特徴は、58種類のアロマ(香り)ごとに項目が分けられている点だと思います。

見開き2ページごとにアロマが1種類ずつ紹介されています。最初の項はそのアロマの性質を客観的に説明したもの。芳香分子がどのように作用して匂いを放つかの説明です(アロマの特徴)。次の項は、そのアロマを発する物質は何であるか、どこでどんなふうに生育しているものなのか、どこでその香りを嗅ぐことができるのかといった解説(自然からの発見)。それから最後の項には、どのような種類のワイン、どのような銘柄にそのアロマが現れるのかが例示されています(ワインからの発見)。コンパクトに必要な情報がまとまっているので、香りの勉強をするのに適しているのではないでしょうか。

こういう写真入りのガイドブックは往々にして翻訳版を作る際に字数制限があります。編集上、原文で見開き2ページの内容をそのまま日本語版の見開き2ページにおさめるケースが多いからです。これまで、こういう条件の仕事はいくつか経験してきましたが、不思議なことに、参考書、ガイドブックの場合、字数を意識しないまま訳してしまうと日本語のほうが字数が多くなるようなのです。本書の場合、原書に列挙されたワインの銘柄はどれ一つとして外すわけにはいきませんので、翻訳はもとより、ゲラ直しの時点でも端的な文章に収めるのに苦心しました。原文からいかにその内容をもれなく抽出するか――たとえば字幕翻訳をされている方々のご苦労がほんの少しであってもわかった気がいたします。そうした苦労や日本語になったときの違和感を感じさせない文章にする、それが今後も続く私の課題かなと思っております。
それでも原書にあった情報はすべて載せてありますので、ご安心してお読みいただければ幸いです。



ワインを楽しむ58のアロマガイド