2013-10-25

ポアンカレ予想の証明についてのドキュメンタリー

近所の古本屋さんで見つけたこの本、興味を引かれて買ったものの、いわゆる積ん読になっていました。「こんな面白そうなドキュメンタリーやっていたのか、見たかったな」と思ったんですけどね。やっと読み終えました。

http://www.shinchosha.co.jp/book/135166/



去年の今頃、数学がテーマのお仕事に少し携わっていました(とはいえ、出版自体が保留になっているようでして…)。そのお仕事でも多少採り上げられていたいくつかの「予想」についてもこの本では触れられています。私のように数学に縁がない人にも、非常にわかりやすい説明になっています……といいますか、正直なところ、この本を読んではじめて「ああ、そういうことを言いたかったのね」と具体的なイメージがつかめたわけです。で、これってすごく面白そうな話じゃないですか。

となりますと、当然、元ネタの番組が見たくなります。なんでもNHKオンデマンドの特選ライブラリーで見られるとのこと。しかも、60分版と110分拡大版があります。どのみちお金を払って視聴するわけだから、長いほうを見た方がお得かな…と思い、今日ついに番組も見てみました。

NHKオンデマンド | ハイビジョン特集 数学者はキノコ狩りの夢を見る ~ポアンカレ予想・100年の格闘~

http://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2011027278SA000/


動画で見るとさらにわかりやすい。たとえば位相幾何学(トポロジー)の説明では3Dグラフィックスならではの特徴を生かしていました。でも、もう一度見たいな。できれば、息子がもう少し大きくなったら見せたい。オンデマンドだと3日間しか見られないわけだし…と思いつつ、さらによーく調べたら、DVDも販売されていました(笑)。

ポアンカレ予想・100年の格闘 〜数学者はキノコ狩りの夢を見る〜| NHKスペシャル・ドラマ等のDVD・グッズ通販 NHKエンタープライズ


http://www.nhk-ep.com/shop/commodity_param/ctc/+/shc/0/cmc/14627AA/

ううむ。どうしようかしら……。

なお同じシリーズで、リーマン予想を採り上げたドキュメンタリーもあるそうです。これも面白そう…。




ところで、なぜペレルマン博士はあのフィールズ賞もミレニアム懸賞問題の100万ドルの賞金も辞退したのか、ドキュメンタリーを見てなんとなくわかる気がしました。こんなに注目を浴びた世紀の難問を証明した上で、名誉も賞金も受けてしまうと、何か気が進まないことを頼まれても断れなくなりますよね。誠実な人ならなおさら、もらいっぱなしなんて道義的にできなさそうじゃないですか。数学界でのしがらみが強くなりそう。

それだけならともかく、数学界に関係ない筋からも殺到する取材の申し込みをいちいち断わっていくのも、ほんっとにめんどくさそうです。すべてを拒絶して隠遁生活していても、実際、こうやって極東からもテレビ取材が押しかけてくるのですから。

数学者としてのプライドとか、数学に対する純粋さへのこだわりとか色々言われていますが、博士にとっては単に、社会的名誉や大金よりも誰にも縛られない時間の自由のほうがはるかに価値があったのだろうな…と思ったわけです。

でも、私だったらお金が欲しい……。

なお、ペレルマン博士が辞退したクレイ研究所の100万ドルの賞金は、フランスのアンリ・ポアンカレ研究所で、才能ある若い数学者が自分の研究だけに専念できるような、いわば奨学金に使われるようになったそうです。

The Poincaré Chair | IHP | Institut Henri Poincaré | CNRS | UPMC

http://www.ihp.fr/en/activities/poincare-chair