2019-05-30

自粛(自己検閲)の時代

まずは『鳥頭なんて誰が言った?』の分類調査のご報告。
といってもそろそろ雑誌も仕入れにいこうかと思っていたところでした。ですので、まずは新宿南口のBooks Kinokuniya Tokyoへ。


でもなんといってもフィナーレを迎えてしまったビッグバンセオリー特集の本。これはマジ買いでしたね。こうして雑誌を買いあさったあとに、紀伊國屋書店新宿本店のほうに歩いて行きました。そうですね、これ以上気温が高くなったらちょっと外歩きは厳しいかな。そうなると、副都心線の地下道をあるいていくことになるんでしょうか……。


理工書は幸いにして4階にありますので、エレベーターが混んでいても1階からエスカレーターで行けるんですよ。これは昔からの紀伊國屋書店本店攻略Hack? というか、エスカレーターまだ残ってたんだってちょっと感動しました。
こうして『鳥頭なんて誰が言った?』がどこに置いてあるのかおそるおそる見に行ったわけです。



正直びっくり。霊長類の本といっしょに平積みになっていました。棚のカテゴリーも「動物学・進化」でして、本書は動物の知能とは何かを考えるにあたって、進化についても考察していますので、まさにしかるべき場所であります。
お気遣いくださいまして、重ね重ねお礼申し上げます。

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帰宅後、編集者でもあり、作家でもあるクリストフ・オノ=ディビオの記事を読みました。「抜粋」って書いてあったから、もしかしたら他の媒体で既にでていたものなのかもしれません。『アメリカン・サイコ』の著者であるブレット・イーストン・エリスのインタビューでした。私は、実は『アメリカン・サイコ』の映画も観ていないし、原作も読んだことがないので、この記事を読んで初めて知ったのですが、舞台は90年代、そして主人公パトリック・ベイトマンは事業家のドナルド・トランプを神のようにあがめているという設定だそうですね。
著者自身もリベラル系の政治家が好きではないようですが、トランプが大統領になったときに「パトリック・ベイトマンがきっと喜んでいる」というようなことを、冗談でツイートしたらしいんです。でも結局、その後、自分で削除したそうです。彼曰く、いまのSNS時代はみんながみんな自分を「被害者化」するものだから、もう何も言えやしない、とのこと。一時日本で流行った言葉「ポリコレ棒を振りかざす」ってやつですかね。

そういうふうに一世を風靡した作家でさえ、米国では自分のツイートを自己検閲してしまうのか、と驚いた次第です。

本屋さんに行く前に、エルジャポンのこのナタリー・ポートマンの記事も読んで考えさせられました。


ナタリーはこのインタビューでも言っているとおり、『レオン』での経験はすごく気に入っているんです。昔から。ナタリーが20代の頃にベッソンが『マチルダ』っていういわゆる続編企画をやろうとしたことがあったらしいのですが、結構乗り気だったという話も当時読んだことがあります。

ナタリーは自分が出世したのはこの映画のおかげだと言っていますが、あえて言わせてもらうなら、ジャン・レノの俳優としての潜在能力を引き出した唯一の人がナタリー・ポートマンだったわけですよね。ジャン・レノはベッソンの映画たくさん出てるけど、レオン以上の演技は結局ありませんし……。ベッソンだって引き出せなかったものを子どもだったナタリーは引き出しちゃったんだよ。

そういうふうなポジティブな思い出がある、ベッソンにしては名作映画でも、人に勧める(彼女の場合は自分の子どもに、となりますが)ことを考えてしまうと、「不適切」と自己検閲してしまう。だったらここはもう、ジョディ・フォスターにタクシー・ドライバーについて聞いてほしいよ。もう聞かれてて答えてるかもしれないけど。

www.cinemacafe.net

……3年前に答えているようです。でも、#MeTooの前だから今だとまた違うような言い方せざるを得なくなっちゃうのかな。

話は戻って、ブレット・E・エリスとポリコレ棒と、気に入らない言動があったらよってたかって叩くあれなんですけど、私の好きなフィギュアスケートの先般の世界選手権の最中に、米国のマライア・ベル選手のバッシングがあったんです。そのいきさつと顛末はもう何なので、知らない方は「マライア・ベル 世界選手権」でググればわかると思います。

何がすごかったかというと、練習中に故意に同門の選手の足をけがさせたとして、けがさせられた選手のファンが、本人のみならず、ベル選手の家族や友人までのアカウントまで出向いて(インスタグラムは誰がフォローしフォローされているか、公開アカウントならわかりますからね)ネットでバッシングの総攻撃をかけたことなんですよ。ちなみに国際スケート連盟としての見解は「故意とは認められない」とかなり早い段階で声明は出していたのですが……。

そして世界選手権後、ベル選手はこのような投稿をし、しばらくの間、コメントを受け付けない設定にしました。

そこで、自分のことを考えてしまうのです。私はいまや実名でTwitterもしています。それこそ不適切な発言なんてたくさんあります。たとえば私は「天皇制を続けるなら国民に一言聞いてくれたっていいでしょ」なんて書いてしまいますが、そのひとことで、一歩間違えれば私だけでなく、私の家族や友人がネットバッシングやら嫌がらせを受ける可能性だってあるんです。

でも、私には意見があります。それが一般的ではなく、常識外れで、モラルにすら反していることがあったとしても、それを表明するのは私の自由であり責任です。実名でやってますよ。個人的なこともずいぶんツイートしています。それがいいわるいかといえばよくないのかもしれませんが、それが私なのです。ですが、家族や友人がバッシングという形で人質に取られたら自分の思うように何が言えるでしょうか?
結局、自粛、当たり障りのないことを言う? 自己検閲? 実際、気を遣った発言をしないおまえがわるいって世の中になりましたよね。
実際、仕事のうえでも、政治的に当たり障りがないことを言う翻訳者のほうが依頼側としては好むと思います。

私はインスタグラムを自分の情報収集と一般に向けての発信のためにアカウントをとったときにこだわったのは、絶対にFacebookの個人アカウントと連絡先をリンクさせないことでした。そもそもビジネスアカウントをFBでいまさらとるのも…と先日書きましたが、そのきっかけはインスタグラムです。インスタグラムに関しては個人では利用しないようにしてビジネスアカウントのものしか使っていません。

インスタグラムってFacebookのアカウントがある状態で始めると、それはもうしつこく、Facebookのお友達をフォローしましょう、って出るんです。ビジネスアカウントにしてもですよ。で、関係ないそれこそフィギュアスケーターをフォローすると数人でロックがかかる。当初、黒柳徹子もフォローできなかった。フランスの出版社のアカウントも、何も。そしてFacebookのお友達をフォローしましょうと出る。
私は頭にきて、インスタグラムに苦情書きましたよ。わざわざ英語で。インスタグラムの自分の個人的な知り合いが誰であるか公開されるような形では使いたくない。かといって内輪用に使いたいわけではなく(鍵かければフォロー・フォロワー見えなくなりますからね)、自分の仕事についての発信と、情報収集に使いたいのであって、私の好きなフィギュアスケーターやセレブやあとは文房具の情報とか出版社の情報を見たいのだと。

私がいわんとしていたことがどうやら通じるようになるまで、優に2週間はかかったと思います。それまで私はスパムでもない証明として、とりあえずそれなりの写真を投稿していました。

私は自分の発言に対して何を言われようとかまいません。実際に不注意による発言で大いに反省すべきものもあるでしょう。ですので、何かおかしかったら私にメンションくださってもこのサイトの連絡フォームでもお使いになってもかまいません。ついでに申し上げるのもなんですが、仕事のオファーでもいいですよ。

ですが、家族と個人的な知り合いを巻き込みたくないですし、家族に至ってはTwitterでは私をうかつにフォローできないように(ほかの人たちにばれないように)ブロックすらしています。

今日はもうこんな時間になってしまったので、ここまで書いた理由のきっかけになった話はまた後日書きます。



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