2019-04-30

結局AIなのかな。

こういうまとめを見かけました。




私はピッツバーグ大で米国の大学進学希望者向けの外国人英語講座に通ったことがあります。夫の転勤について行ったときのことです。まだ子どももいなくて暇だったので、そうした講座を受けさせてもらいました。そのときに先生が強調したのが、「全文を音読するな、スキャニングしろ、大事なところを拾え、でないと大学の授業についていけない」ということ。ページの真ん中に視線を置き、上から下にその視線をまっすぐ下ろして内容を把握するんだそうです。

で、私もそれができるようにはなりました。それは今の副業の翻訳業にも生かされているかもしれません。初稿を納めるまでに自分が持てる時間はそれほど多くないこともあって、私は特に音読しないで読みがちなります。すると、そこそこ読み間違いのポカも出てきます。つまりこういう状況の書籍翻訳でAIに人間はかなわなくなるだろうなというのは、まさにその点なのです。スキャニングして読むのならば、AIのほうがはるかに速く正確に把握できるだろうから。つまりインプットのほうですね。

したがって、勝負するならばアウトプットのほう、つまりどのような日本語にするか、どのように言葉を選ぶかということになると思うのですが、そういうのもじきにAIに追いつかれるのではないかと思います。少なくとも、私の息子が成人して社会人になるころには追いつかれている。だから、もう私は翻訳業にさほど将来性を感じてはいないんです。

というのも、アウトプットの仕方もある程度定番のやり方があるんですね。それに則っていないと誤訳だと判断されることもあります。たとえば、私は「常軌を逸した」という表現は実際には○和辞典にしかない表現だと思っていますけど、私の観測範囲でのこの業界では好まれて使われていて、その表現を使ったほうがいいと勧められるのは一度や二度ではありませんでした。

そういうことならば、結局AIに頼ったほうが確実なのかなあと。もちろん、その一方で、辞書に載っている言い回しをそのまま使うなとそれに固執する、偏った考えも別のところでありますが、それも業界の第一人者がそういう意味で一定の型に嵌めているだけなので、それならばAIに学習させてしまった方がちゃんとできるかもしれない。映画やテレビ番組の字幕も字数の関係で、こういう言い回しはこういうふうにとある程度型があるように思います。

また「ね」「わ」「でしょ」などがつくような女言葉は実際の日本語口語を反映していないという話がでてくると、何でもかんでもつけるなと言われることがあります。でも、そんなの人によるわよね。それに、観察していると仕事ができる女みんなが男っぽいサバサバ口調じゃないでしょ?私は違うと思うわ。あなたはどう思うかしら?

翻訳者の個性と判断に任されている分野は、案外文学でさえ限られているのかもしれません。一般書にジャンル分けされるような本の場合、たくさんのタイトルを出して、タイトルあたりの印刷部数を少なくする、つまり数打って当たった本だけ増刷するやり方をするわけですから、タイトル一つ一つに与えられる時間は訳者のみならず編集者にとっても少なくなるでしょう。それに報酬率も小さいですから、一つの作品にじっくり時間をかけていたら生活できないとか出てきますよね。これは私がよく愚痴ることですけれど。

マイナーな言語が底本ならば、じっくり取りかかる時間がもらえるということはもしかしたらあるかもしれません。ですが、今は英訳が出ているならばそちらの版権を買って、人材豊富な英語翻訳者に頼んだほうがコストがかからないので、そういった重訳は増えていると思います。絵本なんて特にそうじゃないかしら。もし、それが英語でなくいまや中国語だというのならば、この先、中国の版権を買って重訳することになるでしょうし。

では中日翻訳をするならば、中国人翻訳者のほうが日本人よりも人材として豊富かもしれません。それでも、最終的にはAIに学習させたほうがお得になっていくのかなと思います。それこそAI、ディープラーニングに関する本の英仏書籍翻訳では、AIにまず自動翻訳させて、その分野の専門家がそれを読んでおかしなところをサクッと直したという触れ込みの本が出版されています。どうも世界的に有名な本だそうです。






その日本語訳は十人近くの監修者と翻訳者で翻訳をやったのではなかったかしら。




日本語の専門書翻訳もきっと時間の問題ですね。その前に実務翻訳かもしれませんが。自作や指定の用語集をTRADOSに入れてどうこうという時代でもなくなっているのかも。私は実務をやっていないのでわかりませんが、この先どうなるのかは非常に興味深いです。

そういう意味で、フランコフォニー振興政策というのも最後のあがきなのかもしれません。マクロン大統領はフランコフォニーとAIに力を入れていますが、こうした視点で見ると矛盾しているのではと考えてしまいました。

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